無煙フラックスの特許取得
【背景】
溶融亜鉛めっき行程中のフラックス処理は、鋼材をめっき浴に浸漬する際に鉄と亜鉛の合金化反応を阻害する物質の発生を防ぎ、表面の異物を取り除く働きをする重要な工程です。現在は殆どのめっき工場で塩化亜鉛(ZnCl2)と塩化アンモニウム(NH4Cl)および界面活性剤を主成分としたフラックスを使用しています。ところが、塩化アンモニウムを主成分とするフラックスは、めっき時に塩化アンモニウムが昇華、あるいは分解揮発することによって多量の白煙を生じます。この白煙が作業者への悪影響、工場内の視界不良、排煙装置の設置・稼働によるコスト増、時として周辺地域の環境悪化を生じることもあります。
そこで当協会では平成21年度よりこの問題の解決に取り組み、塩化アンモニウムを主成分としないフラックスの開発に成功し、このたび特許を取得いたしました。
【特許の概要】
溶融亜鉛めっき用のフラックスの機能としては、(1) 融点が低いこと、(2) 化学的洗浄力を十分に持つこと、(3) 潤滑能力や流動性が高いことであり、今回の開発ではこの機能を保ちつつ、 (4) めっき浴に浸漬した際に煙を発生しないことの条件を満たす成分系を見出すことが課題となりました。その結果、ZnCl2を55~86重量%、NaFを10~38重量%、NaCl、KClのいずれか1種類以上を合計で0~35重量%含むフラックスで、ZnCl2のmol濃度がNaFのmol濃度の1/3より多くなる組成としたものを開発しました。使用時にはこのフラックスを水溶液とし、HClを添加しpHを0.9~2.0に調製し、沈殿物を溶解します。こうすることによって鋼材をめっき浴に浸漬する際に煙が発生しない、あるいは発生量を無視できる程度まで抑えることができます。
【特許の成立】
上記内容のフラックスに関する特許を平成22年8月16日に出願し、平成26年10月3日に特許として登録されました。
【特許の名称】
特許第5621398号「溶融亜鉛めっき用無煙フラックス及びそのフラックスを用いた溶融亜鉛めっき方法」
【特許権者】
一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会
【発明者】
沖 猛雄(名古屋大学名誉教授)
市野 良一(名古屋大学教授)
【今後の展開】
現在、フッ素化合物を使用しない成分系での開発を進めており、その第1弾目のフラックスが開発され特許出願中です。さらに今後種々の成分系を開発し、それぞれのめっきプロセスに合った無煙フラックスを提供していく所存です。
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