亜鉛は必須元素です。
生体は、それが必要とする元素を大気や水、土壌などの自然環境から直接または食物を介して間接的に取り入れています。生体細胞がこれら必須元素を必要量摂取できていれば生育は順調に進みますが、摂取量が少なすぎると生育不良を起こしたり、あるいは過剰に摂取すると有害となる可能性があります。
- 亜鉛欠乏による障害
- 亜鉛による中毒
1. 亜鉛欠乏による障害
生体に亜鉛が欠乏した場合の障害に関しては多くの研究論文が発表されていますが、主なものとしては
(1) 味覚障害
(2) 成長の阻害
(3) 生殖機能の障害
(4) うつ状態と食欲不振
(5) 易感染症の増大
などがあります。
アメリカのNational Research Councilの発表によると、食物から摂取する亜鉛の推奨飲食規定許容量として
幼児(0~1歳) |
5mg/日 |
子供(1~10歳) |
10mg/日 |
男性(11~51歳以上) |
15mg/日 |
女性(11~51歳以上) |
12mg/日 |
妊婦 |
15mg/日 |
授乳婦(最初の6ヶ月) |
19mg/日 |
(後半の6ヶ月) |
16mg/日 |
とされています。
2. 亜鉛による中毒
生体に有効ないかなる栄養素、薬物といえども、それが過剰に摂取されれば有害となります。亜鉛においても同様な事が言えますが、亜鉛の毒性は極めて低く、平常の摂取量と、何らかの有害な作用を示すような摂取量との間には広い幅があります。
人体への影響については、経口中毒と吸入中毒に分けることができます。
(1)経口中毒
亜鉛の塩類は消化器等の粘膜を刺激して、大量摂取すると致命的な虚脱を招くことがあります。経口致死量は、硫酸亜鉛として摂取した場合、5~15gとされています。
(2)吸入中毒
産業現場では、金属亜鉛の溶融、黄銅または青銅の鋳造・加工・ろう付け、亜鉛めっき鋼材の溶断・溶接などの作業に際して発生する酸化亜鉛のヒュームの吸入によって発熱症状を招くことがあります。これを亜鉛熱、真鍮熱、金属熱などと呼んでいます。この場合の症状は、吸入後2~8時間頃に現れる発熱症状で、インフルエンザ様の悪寒を伴い、数時間を経過すればほとんど完全に回復します。